大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)3967号 判決

物品税の課税標準価格は時価である。されば、物品税はその物品が有する時価、即ち、その物品が取引されるであろうところの市場価格を標準として課税されるのがその建前であると解すべきである。しかし、その物品について物価統制令第四条の規定による統制額の定がある場合には、その物品は統制額の範囲内において取引さるべきことが予想されるから、物品税法第三条第一項本文にいわゆる「製造場ヨリ移出スル時ノ物品ノ価格」とは製造業者が製造場から移出する時の統制額を超えない範囲内におけるその物品の時価と解すべきである。随つてかりに、製造業者において右統制額を超えて販売する目的をもつて、製造場から物品を移出したとしても、その希望価格は法が公に認めた価格ではないから、かかる高価な価格を基準として物品税を課することは、帰するところ、国の機関が統制額を超えた物品の取引を是認したのと同様な結果を招来する奇観を呈することとなつて、その不当なことは、論を俟たないところである。しかし、かりにある物品について統制額が定められている場合であつても、一定の検査証紙の貼付がない物品については、証紙が貼付してある物品の統制額よりはるかに低いいわゆる禁止価格とも称すべき極めて低廉な統制額が定められているような場合には、法の意図するところはその物品を検査のために所定の機関に提出せしめて検査を受けしめ、これに合格した物品には一定の証紙を貼付せしめることとし、若し未検査品をその儘販売せんとすれば、たとえその物品が検査に合格できる優良品であつても、これを検査に合格しなかつた粗悪不良品と同一な価格、即ち、統制額よりはるかに低廉な価格をもつてこれを販売するの止むなきに至らしめ、もつて、検査により、物品の品質の低下や統制額を超えて為される物品の取引を防止し、併せて、かかる制度により間接に未検査品のいわゆる闇取引を防止するような手段を構ずるにあると見るべきである。それ故製造業者が最初から検査に合格する見込のないような粗悪不良な物品を製造するつもりではなく、却つて検査に合格できる物品と同等又はそれ以上の良質高級の物品を製造し、これを証紙を貼付した物品の統制額以上の価格で販売するため、未検査の儘これを移出したような場合には、若しかかる物品を検査のため提出すればその物品は検査に合格し、所定の証紙を貼付しなければならなくなる結果故意に該物品を検査のために提出しなかつたことが推定されるのである。従つて、該物品が不合格品と同様な、いわゆる禁止価格で取引されるようなことは到底これを想像することができないのであつて、かくの如く統制額を超えて右物品を販売せんとする製造業者の意思が明らかに認められる場合は該物品が所定の検査に合格して一定の検査証紙を貼付された場合と同じ価格をもつて物品税課税の標準とするのが相当であるといわなければならない。若し、そうでないとすると、右の如き不当な行為に出でたものが右禁止価格の定があるために却つて納入すべき物品税を減額されたり、物品税納入の義務を免かれたりするようなことになるのであつて、かかる不合理な結果は到底法律の予想しないところであるからである。ところで、原判決挙示の証拠によれば原判示各洋傘は、いずれも、検書に合格し、又は合格しうべかりし優良な物品であること及び被告人は原判示会社の業務に関し、右洋傘中、検査のために提出しなかつたものについては、いずれも合格品の統制額を超過して取引する意図の下にこれを移出したことが、それぞれ、認められるから、原審がその価格については全部これを所定の検査に合格して証紙を貼付したものの価格と同一なるべきことを前提として、原判示物品税逋脱の事実を認定したのは、もとより相当であつて原判決には何等所論の違法はない。所論は原審と異なる独自の見解の下に原審の為した事実の認定及び法律の適用を非難するものであるから、到底これを採用することができない。論旨は理由がない。

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